「ごめんね、なかなか連れて来れなくて」
車の助手席に座っている私に、運転席の尋くんが言う。
「ううん。犀川くんが無事でよかった。真島さんも」
犀川くんはあの後車で病院に連れて行かれて、命に別状はなく、肩も弾が掠っただけだったので大事にはならなかった。
ただ3週間の入院が必要で、今も病院にいる。
事態が落ち着くまでは危険だからということで、私は事件から1週間経った今日までお見舞いに来られていなかった。
学校と家の帰りも尋くんが送り迎えをしてくれて、また危険な目に遭わないように守ってくれていた。
真島諒介も、腕は重症だったけれど、命に別状もなく、リハビリをすれば普通に生活できるようになるということだった。
尋くんは北区に勝ったからということで、西区の幹部に任命されたらしい。
幹部というのが何なのかはよくわからないけれど、多分地位が上がったということで、すごいことなんだと思う。
北区では真島諒介がリーダーを辞めて、なんとジョーくんが北区のリーダーになった。
ジョーくんは、薬物も女の子の斡旋も全面禁止にして、組織内での人望も厚いらしい。
「とにかくアットホームで家族みたいな場所にしたい!」と、会社の採用活動みたいなことを言っていた。
ジョーくんと尋くんは元々関係があったので、西区と北区の長期にわたる争いも終わりを迎えた。
もう西区と北区で戦う必要もなくなったと思うと、安心だ。こうして私たちの元には、平和な日常が戻ってきたのだった。



