真夜中に恋の舞う






「妹尾、お前のせいで組織内での俺の権威に傷が付いた。お前に一度負けてから、リーダーである俺の権力が絶対的ではなくなった」





真島諒介は、尋くんに向かって話しながら、倉庫のドアを閉めた。密室空間が出来上がる。






「お前、スパイのためにうちにいた間に、俺の部下たちに変なことを吹き込んだだろ。俺に反対する奴らが出てきたのは、お前のせいだろう」




勢いよく吐き捨てる真島諒介に、尋くんは表情を崩さない。





「それは違う。お前がずっと権力だけで部下を従わせていただけであって、お前のやり方に不満を持っている奴はたくさんいた。

それでもお前が他の組織に勝ち続けているうちは抑え込めただろうが、俺たちに負けて、権力を失ったお前について行く価値がないと思われただけだろ」





北区の中にも、リーダーである真島諒介に反対する勢力が出てきている。そんな話を犀川くんから聞いたことを思い出す。






「っ……俺にはここしか、居場所がないのに。ここにしかいられないのに。どうしてだ!?どうして何でも持っているお前が、俺から居場所を奪うんだ!?」







逆上した真島諒介が、スーツの内側から銃を取り出して、尋くんに銃口を向ける。



カチャっと音が鳴って、その光景が信じられなくて目を見張る。



薄暗い倉庫で、尋くんに銃口が向けられている。



銃が出てくるとは思っていなくて、思わず私の前に立っている犀川くんの、制服のブレザーを掴む。


犀川くんは、真島諒介から目を離さないまま、私の手を強く握った。