「あ、起きたんだ」
聞き馴染みのある声。学ランから出ている、パーカーの赤いフード。
久しぶりのジョーくんの姿に、不本意だけれど少し安心してしまった。
「ジョーくん……」
ジョーくんがいるということは、やっぱり私は北区に連れ去られたということなのだろう。
「ごめんねー。俺も一応北区の人間だからさ、助けてあげたりはできないの。萌乃ちゃんが逃げないように監視するのがお仕事だから」
ジョーくんは、いつも通りヘらへらした態度で、近づいてくる。
私の近くに置いてあったパイプ椅子に座って、マットに横たわっている私を見つめた。
倉庫のドアはもう閉められて、光のない、暗い空間だけが広がっている。
「あ、手痛い?ちょっと緩めるくらいならしてあげるよ」
ジョーくんはそう言って立ち上がり、私の手足をきつく縛っていたロープを緩めた。痛かった手足が、少し解放される。
「あ、大きい声とか出しても別にいいけど、ここ人通りないから誰にも聞こえないよ。むしろ組織の奴らに聞こえたら危害加えられるかもしれないから、大人しくしててね」
「……」
そう言われて耳を澄ますけれど、確かに外からの物音は少しも聞こえない。
一体どのくらい遠くまで連れて来られたんだろう。
目の前にいるジョーくんも、敵なのか味方なのか全然わからなくて、怖い。



