真夜中に恋の舞う





「あの、水沢さん」

「うん?」

「今帰ろうとしたら、校門の前に黒い車が止まってて。中の男の人が、水沢さんに用があるって言ってたんだけど……」



「え、本当?ありがとう、行ってみる。はるちゃん、また明日ね」



「うん、また明日〜」





はるちゃんと別れ、校門に向かう。


黒い車ということは、きっと尋くんだろう。


ということは、今日は犀川くんじゃなくて尋くんと一緒に帰る日なのかな。


特に犀川くんから連絡きていなかったと思うけど……。




不思議に思いながら校門に出ると、確かに黒い車が停まっていた。


でも、いつもの尋くんが乗ってる車じゃない。


ドクン、と心臓が跳ねて、嫌な予感がする。



車から降りて来た男は知らないひとで、まずい、と脳が危険信号を発した瞬間。






いつの間にか私の背後に回っていた男に、口元に布を当てられる。


息を吸い込んだ瞬間、景色がぐらりと歪んで、だんだんとぼやけて、それから私は意識を手放した。