もう1度廊下の壁から生徒会室の方をのぞいてみたけれど、やっぱりそこにいるのは浅木さんと犀川くんの2人だけ。
犀川くんの言葉に、浅木さんも驚いた顔をしていた。
「あったかくて、優しくて、一緒にいると安心して。焦った顔を見るともっといじめたくなったり、拗ねた顔が可愛かったり、素の俺を好きだって言ってくれるのは、萌乃だけです」
その言葉に、心臓がぎゅうっと締め付けられる。
犀川くん、そんな風に思ってくれてたんだ。
「で、でも、私だって素の犀川くんのこと好きなのに!」
焦っている浅木さんに、犀川くんはふっと笑う。
「俺が学校休んで、人殺しだって噂が流れた時、俺のこと信じてくれてました?」
「っ……それは、」
「すみません、萌乃が待ってるんで、もう行きますね」
悔しそうに立ち尽くす浅木さんを置いて、犀川くんは涼しい顔でその場から背を向ける。
犀川くんが歩いてくるのは、今私が隠れている廊下の方。
まずい、盗み聞きしてたのが見つかる……!
慌てて逃げようとしたけれど、遅かった。
犀川くんはすでに廊下を曲がって、慌てる私を視界にキャッチしていた。



