「今日暇?って聞いた」
「今日……特に予定は、ないです」
「じゃあ放課後デートしよっか」
「も、もうキャパオーバーです……」
勘弁してください、と続けると、犀川くんは可笑しそうにクスクス笑っている。
ああ、昨日までは想像もできなかった現実。いや、何度も妄想はしたけれど。
憧れの犀川くんと喋れたらいいな、名前なんて呼んでもらえたらな、もしも彼氏になったらどんな感じかなって、考えたことがないとは言わないけど。
そんな夢みたいなことが現実になってしまったら、もう頭がいっぱいで追いつけないよ。
「ふーん、面白いからやっぱりデートしよ」
少し意地悪に口角を上げて、俯く私の顔を覗き込む犀川くん。
ああもう、ずるい。そんな意地悪な顔も持ってるなんて、聞いてないよ。
もちろんそんなのを断れるはずもなく、犀川くんの少し後ろを歩いて駅を通り過ぎて、駅前の繁華街に入る。



