「正直、妹みたいな萌乃が不良仲間の後輩に取られるのはちょっと微妙な気持ちだけど……。

まあ、深雪なら大切にしてくれるだろうから、許すかな」





眉を下げて、少し困ったような顔で笑う尋くん。





「お兄ちゃんの公認なら安心だね」


「何か嫌なことされたら言うんだぞ。俺が対処するから」



「対処って……」




やっぱり過保護な尋くんがおかしくて、くすくす笑う。




「尋くん、私から離れたのって、私を守るためだったでしょ」


「……」





尋くんは目を細めて、少し切なげな表情をした。
何も答えないことが、肯定だと思った。






「ありがとう。ごめんね、ずっとその優しさに気付かないで、嫌いなんて思って」



「いいんだよ。


俺は、大切な人が幸せなら、幸せにするのが自分じゃなくてもいいって思ってるから」







尋くんの言葉は、難しくてすぐにはよくわからなかった。でも少しだけ寂しそうなその瞳に、なんだか心がぎゅっと締め付けられて、くるしかった。