「犀川くん、過保護だよ」
「だって昨日、尋さんが初恋だって話聞いたばっかりだし。絶対ぐらつくなよ」
「大丈夫だって」
思ったよりも嫉妬深かったらしい犀川くんに笑いながら「また明日」と手を振った。
「尋くん、お待たせ!」
学校の近くに停まっていた黒い車のドアを開けると、尋くんが優しい笑顔で迎えてくれる。
「学校お疲れ様」
尋くんは私がシートベルトを閉めたのを確認してから、車を発信させる。いつも歩いて帰る通学路が、凄い速さで通り過ぎていくのを眺める。
「……付き合い始めたんだってね、深雪と。おめでとう」
尋くんが目を細めて、優しい顔で微笑む。
泣きぼくろのあるたれ目の瞳が細くなる。
「うん、ありがとう」



