「……俺が萌乃に近付いたのは、組織に萌乃を守れって言われてからっていうのもそうだけど、1番は尋さんに言われたから。


尋さんは萌乃を心配してて、自分のせいで萌乃が狙われてる、自分のことが許せないって言ってて。


……お互いに大切な存在なんだなと思うと、ちょっとむかついただけ」





「でも私は尋くんに感謝してるよ。尋くんがいなかったら私たち、出会えてなかったかもしれないし」



「まあ、そうだな」






同じ高校とはいえ、尋くんのことがなかったら、私と犀川くんが今こうして隣にいるような未来はなかったと思う。


私は犀川くんに憧れていたかもしれないけど、きっと憧れだけで、実際に言葉を交わしたりはしなかっただろう。


尋くんがいたから、犀川くんが私を守ろうとしてくれたから、今がある。思えばこの数ヶ月本当に色々なことがあったけれど、今犀川くんの隣にいる。それだけが全てだと思う。








「ごめん、今日は用事があって家まで送れないから、尋さんに送ってもらって」


次の日の放課後、私の教室まで来て謝る犀川くん。





「うん、わかった。全然大丈夫だよ」


「……尋さんと、何喋ったか後で教えて」




少し拗ねたような顔で言う犀川くん。
この人、こんなに可愛かったっけ。