「尋くんと犀川くんは、どういう関係性なの?」
ああ、話してなかったっけ、と犀川くんがつぶやく。
「尋さんが、俺を組織に入れてくれたんだ。
両親がいなくなって1人になって、夜の街に出ては喧嘩ばっかりしてた時に、俺を拾ってくれたのが尋さんだった。喧嘩してる時に何度か会って、顔見知りになって、3回目くらいに会った時に、俺の家庭事情とかを聞かれて、西区の組織に入らないかって誘われた。
今思えば、このまま俺がグレていったらいつか北区の悪い奴らに利用されるっていうのがわかってて、先に西区に入れてくれたんだろうな」
犀川くんの話を聞きながら、きっとそうだなと思った。
まだ中学生か高校生の犀川くんを組織に入れるなんて、危険なことでもある。
でも北区に入るよりはと、自分の目の届くところで、尋くんは犀川くんを守ろうとしたのだろう。
「俺が1人暮らししてるのも知って、飯連れてってくれたり、仲間もたくさん紹介してくれて、おかげで1人でも生きて来れたし、孤独じゃなかった。だから尋さんには本当に感謝してるし、憧れてる」
小さい頃、私といつも一緒に遊んでくれた、お兄ちゃんみたいな存在の尋くんは、私と離れてから今度は犀川くんを救って、お兄ちゃんになっていたんだ。
そう思うと、私と犀川くんが出会ったことが、必然みたいな気がしてくる。
「萌乃は?」
「え?」
「尋さんと、どういう関係だったの。幼馴染としか聞いてないんだけど」
少し拗ねたような顔。私達の関係が、ずっと気になっていたのかもしれない。



