犀川くんと、正式に両思いになってから1週間。
私たちは毎日一緒に帰っている。
それは付き合う前もそうだったのだけれど、今までと少し違うのは、コンビニに寄り道するようになったことだ。
学校から私の家までは、徒歩で20分くらい。
お喋りしながら歩いているとあっという間に着いてしまうので、帰り道の途中にあるコンビニで飲み物を買って、コンビニの前のベンチに座って喋って帰るようになった。
私はいつもホットのミルクティーを買って、犀川くんはレモンティーを買っている。
意外と甘いのが好きなんだな、可愛いな、なんて思ってしまった。
今日も放課後、下駄箱で待ち合わせをして一緒に外に出る。最近は文化祭も終わって生徒会の仕事も忙しくないらしく、早い時間に帰ることができている。
「最近、学校来れてるんだね。忙しいのは落ち着いてきたの?」
「ああ、今はちょっとだけ落ち着いてるな」
「そうなんだ。よかった」
どうして学校に来れないほど忙しかったのかとか、大丈夫なのかとか、色々聞きたいことはあったけれど、どこまで踏み込んでいいかわかならい。
そんな私の気持ちを察したのか、犀川くんが、いつも通りの通学路を歩きながら話し始める。
「北区は昔から薬物とか、そういう危険なことにも手を出してるって話は知ってる?」
「うん、何となく聞いた」
「その主犯というか、メインになってるのが北区のリーダーでジョーの兄の、真島諒介で。でも最近、北区の中でもそういうのに反対する勢力が出てきたらしくて、内部の分裂が始まってて。
それで、真島諒介も焦ってるみたいで、先月かなり攻撃仕掛けてきたりとかして、大変だったんだ」
内部分裂、薬物、攻撃。
自分の普段の生活とはあまりに馴染みのない言葉たちに、あまち現実味がない。
ドラマの世界の話なんじゃないかと思ってしまう。
それでも私の住んでいるこの西区で、私と同じ高校生の犀川くんは、その争いの真ん中にいるんだと思うと、心が騒ついた。



