「尋くんの関係で私が、狙われてるってこととか」
犀川くんは、何も言わない。
何も言わないけど、ゆっくり視線を落として、小さく頷いた。
「……黙っててごめん。あと、巻き込んでごめん」
申し訳なさそうに、眉を下げる犀川くん。
別に犀川くんのせいじゃないのに、自分の組織に関することだから、こんな顔をするのだろうか。
「ひとつだけ、聞いてもいい?」
私は、机の木目を見たまま聞く。
犀川くんも同じように、視線を落としたまま頷いた。
「……私に近付いたのは、組織を守るため、だよね?」
少しだけ、声が震えた。
ずっとわからなかった。
どうして犀川くんみたいな学校の有名人が、一般人の私なんかと付き合ってくれるのか。
優等生で、生徒会長で、格好良くて、王子様で、ミスコン1位の浅木さんにも好かれていて、何でも手に入るはずなのに。
それなのにどうして、普通の、クラスの中でも目立たないような私を、彼女にしてくれたのか。



