「……親の看病、って」
さっきの犀川くんの言葉を思い出して、聞いてみる。
「ああ、嘘だよ。親はいないって言ったじゃん」
「……じゃあ、何してたの?」
引き下がらない私に、犀川くんは少し考え込むように黙る。
「……ごめん、ジョーくんに聞いちゃった」
「え、」
犀川くんが何も言わないから私が口を開くと、犀川くんは目を丸くしてこっちを見た。
「……会うなって言ったのに」
「ごめん、でも、何も教えてくれないままいなくなっちゃうから」
「そうだな、それはごめん」
いつもだったらきっともっと怒るけど、犀川くんはやっぱり疲れているみたいだった。
「ジョーに聞いたって、どこまで?」
私は少し考えて、思い出しながら話す。
「西区と北区の対立とか、尋くんがスパイだったこととか、ジョーくんのお兄さんが西区のリーダーだってこととか、あと……」
視線を下に落とすと、生徒会室の机の木目が見えた。



