「このまま学校来なくていいよ」
「もう顔見たくねえよな。俺らも殺されたら怖いし」
ガタ、と音を立てて、立ち上がったのは無意識だった。
クラス中の視線が私に集まっているのが分かる。
犀川くんは、人を殺したりしない。
確かに生徒会長は表の顔だけれど、それだって本当の犀川くんの一部だ。
裏の顔だけが本当の犀川くんなんじゃない。
裏の犀川くんだって、皆が思うような悪い人じゃない。
だっていつも、私を助けてくれる。
「犀川くんは、そんな人じゃないよ」
立ち上がった私がつぶやいた言葉が、しんと静まり返った教室に響く。
皆が驚いた顔をして、こっちを見ている。
「犀川くんは、そんな人じゃない」
もう一度、今度ははっきりとそう言えば、皆が困ったように顔を見合わせている。
静まり返っている教室に、ガラッと教室のドアを開ける音が響いた。
私を含め、全員の視線が教室の後ろのドアに向く。



