「萌乃〜?あんた最近ずっと元気ないけどどうしたの?」
「……うん、」
「犀川くんも学校来てないし、何か関係あるの?」
「……」
昼休み、自分の席でぐったりしている私に、不思議そうな顔をするはるちゃん。
ジョーくんの話を聞いてから、ずっと気持ちがざわついている。
もうすぐ、犀川くんが学校に来なくなって1ヶ月が経とうとしている。
学校では、犀川くんが実は不良だった、ヤバい奴だったという噂が広まっている。
話によれば、浅木さんですら「犀川くんがそんな人だなんて知らなかった!平気な顔して一緒に生徒会していたなんて許せない」なんて言っているらしい。
「先生、犀川が人殺して捕まったって本当ですかー?」
「そんな人が生徒会長だったなんて怖すぎるんだけど!」
朝のホームルーム。
担任の先生が入ってきた瞬間、クラスの男子の質問に、皆が口々に騒ぎだす。
先生も困った顔をしているけれど、それを叱ったりしない。
「俺は前から変だと思ってたんだよな。あいつ、本当は悪い奴なんじゃないかって」
「わかる。笑顔が嘘くさいっていうか、胡散臭いんだよな」
「人殺しと同じ学校なんて嫌だよ」
「噂なのか真実なのか知らないけど、そろそろニュースに出てたりして」
冗談めかしてゲラゲラと笑うクラスメイトの男子たち。
今までそんなこと言っていなかったくせに、根も葉もない噂に踊らされて手のひらを返す人たちに、イライラしてくる。



