「ほら、これ以上話すことはないから帰るよ」
「……ジョーくんは、私を捕まえないの?」
「今日はね」
「いつかは、敵になるの?」
ジョーくんは眉を下げて、少し困った顔をした。
「……北区のリーダーって、俺の兄貴なんだよね」
「え……」
「真島諒介っていう、7歳年上の兄。だから俺は北区にいなきゃいけないだけなの。いっそ西区が勝ってくれたらなー、なんて思ったりしてるわけ。本当は尋がスパイだっていうのも気付いてたし」
これは内緒ね、と続けてジョーくんは、私を連れて店を出た。
「気を付けて帰りなね」
「うん、ありがとう。ジョーくん」
「ん、またね」
ひらひらと手を振る彼に、小さくてを振り返した。
ジョーくんの困った顔が、しばらく脳裏に焼き付いて離れなかった。



