ずっと分からなかった。
どうして犀川くんが、突然私と付き合ってくれたのか。
きっと私のことが好きなわけじゃないのだろうと思ってはいたけれど、あまりにも犀川くんが優しいから、もしかしてなんて思っていた。
そうだよね、そんなわけなかったのに。
気付いたらぽろぽろと涙が溢れていて、ジョーくんが今日初めて、少し動揺したのが見えた。
「え、自分が狙われてることよりも、犀川のことで泣いてんの?」
「……っ、うん」
「バカじゃないの。自分の心配しなよ」
「そう、だよね」
言われてみればその通りだけれど、私の頭には犀川くんしかいなくて。
全部全部嘘だったんだと思ったら、苦しくて仕方ない。
ずるいよ。
だって私は、こんなに好きになっちゃったのに。
「泣かないでよ。目立ってるでしょ」
カフェで泣いている私と、呆れているジョーくん。
周りから見たら痴話喧嘩に見えるのだろう、店内の人たちの注目が集まっていることに気付いた。



