驚いて、え、と声が漏れる。
「妹尾尋の大切なものは、水沢萌乃。キミが危険な目に遭えば妹尾尋は必ず助けに来る。キミは妹尾尋をおびき寄せるための餌ってこと」
尋くんをおびき寄せるための、餌。
その言葉がなかなか飲み込めなくて、呆然とする。
だんだんとその言葉の意味を理解するとともに、ドクン、と心臓が鳴って背中を汗が伝う。
私の目の前にいるこの人は、私を、どうするつもりなのだろう。
「あは、俺が怖くなった?」
ニコッと笑うと見える八重歯が、笑った目の奥が、こわい。
「大丈夫、別に今すぐ捕まえたりしないから。信じられないかもしれないけど、俺はまるっきり敵ではないよ」
でも、だって、ジョーくんは北区の人で。
北区の人は、尋くんを許せなくて。だったら。
ぐるぐると、頭が回る。
目の前のジョーくんは、今までと同じ顔をしている。
「……狙われてたのは、私だったってこと?」



