「否定しないってことはアタリなんだ。まあ、あんなイケメンで優しいお兄ちゃんが近くにいたら、恋に落ちたりもしちゃうよねー」
カマをかけられたのか、と気付いたときにはもう遅くて、黙ってジョーくんを睨む。
ジョーくんはケラケラ笑って、それから話を戻した。
「妹尾尋がこっちの世界に入ったのは高校の時の友達の影響らしいんだけど、結構重要なポストにいてね。つい最近まで、北区のスパイをやってたんだよね」
「スパイ……」
自分と同じ世界の話とは思えない単語を複勝する。
「そう。北区の人間のふりをして活動してて、北区の情報を西区に流してた。で、最近裏切って西区に戻って行ったの。妹尾尋の活躍のおかげで西区は優勢、北区は窮地に追い込まれてるわけ。で、北区のトップは妹尾尋が許せない」
背筋がゾッと冷たくなる。
「ところで妹尾尋の弱みってなんだと思う?」
「……尋くんの、弱み?」
何も思いつかなくて、首を捻る。小さい時はニンジンが苦手だったはずだけれど、さすがにそんなことではないことはわかる。
「キミだよ」
ジョーくんが、私を指差す。



