「忙しいところごめんね、切るね」
『え、ああ、うん。また連絡する』
「……ばいばい」
こんなのただのヤキモチで、醜い嫉妬で。
それでも私に会ってない1週間、他の女の子とは会ってたんだと思ったら、悲しくて仕方なかった。
それからまた1週間経ったけれど、犀川くんはまだ学校に来ていない。
学校では、犀川くんが人を殴ったらしいなんて噂も広まっていた。
実は人を殺したこともあるらしい、なんて話すら出ている。
火のないところに煙は立たないと言うけれど、犀川くんの噂はどこから広まってしまったのだろう。
あの電話をした日以降、私から犀川くんに連絡するのはやめようと決めていた。
きっと犀川くんの本当の世界はあっち側で、私のことはきっと頭にないのだろうと思ったから。そして犀川くんから連絡が来ることもなく、私たちはまた1週間、連絡を取っていない。
今まではやめておこうと思っていたけれど。
机の引き出しに入れていた紙を取り出す。
『何か知りたくなったらいつでも連絡してね』と書かれた、紙ナプキン。
連絡するつもりはなかった、けれど。
──知りたい?犀川深雪のこと
ジョーくんの言葉を思い出す。
だって他に誰も、教えてくれようとしないから。



