「もしもし、犀川くん?」
『うん、久しぶり』
「……大丈夫?元気?」
『まあ、何とか。そっちは?大丈夫?』
「うん、毎日尋くんが送ってくれてる」
電話越しに聞こえる犀川くんの声が、なんだか懐かしくて、泣いてしまいそうになった。
『……ふーん。まあ、それはよかった』
「尋くんに妬いてたりして」
『うるせーよ。調子乗るな』
「ふふ、ごめん」
久しぶりに話せたのが嬉しくて、にやにやしてしまう。
「ねえ、犀川く──」
『深雪くん、こっち来てよ〜』
電話口から聞こえたのは、女の子の声。
『待って、今電話中』
『えー』
ざわざわしているから、何人か人がいるのかもしれない。けど。
さっきまで浮かれていた心が急降下して泣きそうになるくらいには、ショックを受けている自分がいた。
そっか、女の子もいるんだ。
言われてみればその組織に女の子がいたって何もおかしくないんだけれど、何だか勝手に男の子しかいないと思っていた。
そっか、犀川くんは、女の子といるんだ。
急に悲しくなって、ぎゅっとスカートの裾を握る。



