焦った…
アリスは心臓に手を当てた。
ドクドクと心臓の音が身体に響いた。
シドはフードを被り窓にもたれて眠っている。
疲れてるのかな…
アリスは起こさないように、トルマンに着くまで大人しくしていた。
暫く走り、馬車は無事にトルマン州に到着した。
「…お疲れ様、アリス。足場が悪くて馬車が揺れただろ。大丈夫か?」
「あ…なんとか。。」
アリス達はトルマンを収める当主に会いに行った。
「…シド殿下、お久しぶりです。」
この地を収める、ジェーン トルマンはシドに手を差し出した。
「変わりはないか、ジェーン。」
「はい。さぁ、家の中へ」
シドとジェーンは家の中へ入って行った。
「…殿下はこのトルマン州とデリヌア州が管轄になるんだ。5家の中でもその2つはさほど大きな州ではない。」
5家とは5つの州を収める豪族のこと。
シドは5家の内、2つの州を国王から命じられ管轄下にしている。
アリスとアランもシドに続いて家の中に入った。
「前回来た時から3ヶ月も経ってしまった。」
「一つだけお耳に入れさせていただきたい事がございます。最近町の商人から、塩や麦を入れている蔵に何者かが何度か侵入している形跡があるとの報告が頻繁にございました。」
ジェーンの言葉にシドは眉を顰めた。
「まさか、塩を盗まれたのか?」
「いいえ、何も盗まれていないのです。それなのに何度も侵入された痕跡があるようで…」
シドは腕を組んだ。
「何も盗まず、ただ蔵に侵入するだけと言うことか?」
「左様でございます。なので大事にはしていませんが、毎回鍵が壊されてしまう為、商人達が困っています。」



