「いつも癒やされてます」と父に頭を下げる一ノ瀬先輩。
今、前に先輩で後ろに私達と、並んで座っているんだけど……。
「僕も、時々写真を見せてもらって癒やされてます。ありがとう」
「いえそんなっ。こちらこそですっ」
目を細めて笑う、父と同年代の男の人。
説明するまでもなく、彼は一ノ瀬先輩の父親である。
学校に着いてから、手汗が止まらない。
日程、行き先、乗るバス、同伴者も同じ。
そして……。
「受付してる時に聞こえちゃったんですけど、一ノ瀬さんも看護コース受けるんですか?」
「はい。獣医志望なんですが、看護学も体験しておきたいなと思いまして」
「そうなんだ。じゃあうちと一緒だ」
なんと、受ける講座も同じで、どうやら志望も同じらしい。
部長を務めているだけあって納得だけど……ここまで重なることってある⁉
いくら動物好きとはいえ、こんなピンポイントでかぶるなんて……。
「市瀬さん、零士はちゃんと部長をやっているでしょうか。暴走してないですか?」
「は、はいっ! 部員思いで、いつもみんなのことを見守っています」



