おばあちゃんに買い物の付き添いを頼まれて、行けなくなっちゃったんだ。
1人で行こうかなと思ったんだけど、保護者同伴で申し込んでたから、急遽お父さんに代わってもらったってわけ。
「お土産にたくさん写真撮ってあげるか!」
「いいけど、静かにしててよね」
「わかってるって。心配性だなぁ」
着席し、荷物を下ろす。
そんなこと言われたって、ハメを外さないか心配なんだよ。
だってこれから行く学校……お父さんが大好きな犬や猫がいる動物系の学校なんだもん。
呑気に笑う父に再び小さく溜め息をつくと。
「あれ? 市瀬さん?」
どこからか私の名を呼ぶ声が聞こえた。
優しくて、心地良くて……とても聞き馴染みがあるその声。
「せっ、先輩……⁉」
顔を上げた先にいたのは──淡いデニムのシャツに身を包んだ一ノ瀬先輩だった。
バスに揺られること1時間。
受付を済ませた私達は、説明会が行われる教室に向かった。
「おお! 君がトラ吉を! ありがとうございました」
「いえいえ! 元気に過ごしているみたいで良かったです」



