郁海に追い打ちをかけられてしまい、返す言葉が見つからず黙り込んだ。



「やけに親しいと思ったら、やっぱりか」

「気づいてたの?」

「もちろん。何かある度にすっげー気遣ってたし。相当気に入ってる感じ?」

「っ……」



ニヤリと笑った雷夜と目が合い、顔が熱くなっていく。


言われた通り、他の女の子達に比べて交流は多い。

連絡を取る頻度も、クラスメイトである朝日さんより多いかもしれない。


けど、気遣うのは当たり前じゃない? 先輩だし、部長だし。

あと、何かある度にって、あれは気遣いというより尻ぬぐい。

ケンカの発端だったくせに得意げに言いやがって……。



「いつから好きなんですか?」

「えー、いつだろう……」



再び颯くんに尋ねられ、記憶をたどる。


育った環境柄、恋愛経験が少なく、人を好きになる感覚を忘れていた。

だから市瀬さんのことも、最初は共通点が多いなとしか捉えていなかった。


けれど──。



「時期はわかんないけど……自覚したのは、この前一緒に帰った時かな。別れ際、ちょっと名残惜しくなったから」