黙り込んでいたら、笹森くんが気を利かせて間に入ってくれた。
わざわざ時間作ってくれているんだから、正直に言わなきゃ。
「面識はないんですけど……実は、この前うちの猫を助けてくれた時に、1度だけ会ったことがあるんです」
誤解されないように、1から丁寧に説明する。
部活紹介の時に同じ学校だったことを知り、それで改めてお礼が言いたくて来たと伝えた。
すると、無表情だった顔が緩み、「あぁ、なるほどね」と納得してくれた。
「あれ市瀬さんの猫だったんだ」
「知ってるの?」
「見学の時間に、『この前猫を拾ったんだ』って話してたから。すり寄ってきて可愛かったって言ってたよ」
えええ、まさかみんなに話してたなんて。
うずくまっていたのは知ってたけど、すり寄ってきたのは初耳だ。
驚きと同時に、ますます興味が湧く一方で……。
「すり寄ってきた⁉ あのトラ吉が⁉」
「うん。のどゴロゴロ鳴らしてたって……知ってるの?」
「知ってるもなにも! うちのトラ美と姉弟だから!」



