そういえば昼間、新入生の相手で忙しいって言ってたっけ。

部長はイケメンで、入部条件も緩くて、さらには自由度も高い。

性別問わず、気になるのも当然。


だけど……。



「……動物より先輩目当て、か」



ちょっぴりモヤモヤしつつ、生物室の戸を開けた。

さっきほど多くはないけれど、それでも全席埋まっている。



「こんにちは。2年の笹森です。樫尾(かしお)くんいますか?」

「はーい」



笹森くんの声に反応した、記憶に新しい低めの声。

樫尾……?
あれ? この名前もどこかで聞いたような……。



「よっ! 零士先輩いる?」

「今先生のところに行ってる。もうすぐ帰ってくると思うから準備室で待ってて」



席を立って、入口付近までやってきた彼。

再び思考を巡らせながら、ふと視線を向けると。



「あ……市瀬さん、でしたよね?」

「は、はい……」



パチッと目が合い、恐る恐る名前を呼ばれた。


私の名前を知っているということは、やっぱりどこかで……?

同じ部活の人だとしても、今まで男子と面識はなかったはず。先に笹森くんが教えたのかな。