「後夜祭に行くの」
「なら送っていこうか? 帰り、遅くなるだろう」
「いや、いいよっ」
車から降りてきた父の背中を、早く行けと言わんばかりにグイグイ押す。
すると──遥か遠くで、久しぶりに聞く、バイクの走行音が聞こえた。
「世蘭ちゃーん!」
視界に捉えた、鮮やかな青いボディと、ピッカピカの黒いヘルメット。
チラリと父を見ると、案の定、目を丸くしている。
「えっ、も、もしかして……」
「…………部長が、迎えに来るから」
夕方5時55分。
数ヶ月ぶりに、家の駐車場にて、2人は再会を果たしたのだった。
✾✾
「父が色々とすみませんでした」
「そんな、全然。久しぶりに会えて嬉しかったよ」
学校に到着し、駐輪場で装備を外す。
彼氏なのかは追及されなかったものの、それ以上にバイクに興奮していた父。
『かっこいいね〜!』って、舐め回すように見てて、もう穴に身を隠したい気分だった。
そして最後には、『娘をよろしくお願いします』と、深々とお辞儀。
最初から最後まで、本当に恥ずかしかった。



