空になったお皿をキッチンに持っていき、そそくさと部屋を後にする。
約束の6時まで、あと25分。
「急いで準備しなきゃ」
小走りで自分の部屋に戻り、制服から体操服に着替える。
そして次に、持ち物チェック。
抜けがないかを確認したら、洗面所で歯を磨いて、身だしなみを整える。
なぜこんなにも慌てているのかというと──この後、零士先輩が家まで迎えに来るからだ。
【今夜、6時に迎えに行くから】
整った字でメモに書かれていた、シンプルなメッセージ。
次に乗れるのは、先輩の受験が終わった後だと思ってたからビックリ。
付き合って初めての2人乗り……ドキドキしてきた。
ものの15分で準備を済ませ、スニーカーを履いて玄関を開けた。
姿がわかりやすいよう、駐車場の外側で待つことに。
「ん……?」
視線の先、曲がり角から現れた、1台の車。
あの黒い車は、もしや……。
「おお、世蘭! 今からどっか行くのか?」
「う、うん……」
予想通り。車の主は父だった。
うわ、このタイミングで帰ってくるなんて……。



