少し離れたところに転がった100円玉を見つめていると。
「よいしょっと。はいどうぞ」
「ありがとうございますっ!」
偶然近くにいた目黒先輩が親切に拾ってくれた。
良かった。危うく買えなくなるところだったよ。
「久しぶりだね。元気だった?」
「はい。先輩もお元気そうで」
前髪をオールバックにして、端正な顔を全開にしている目黒先輩。
最後に会ったのは、まだ1学期だったよね。スポーツ大会より前だった気がする。ということは約3ヶ月ぶりか。
「今から何か買うの?」
「はい。唐揚げを買おうと思いまして」
「唐揚げって、零士んとこの?」
「はい……」
あぁしまった。顔が引きつってる。言わないほうが良かったかな。
でも、犬と猫の話じゃないし……。
「先輩のクラスは、何のお店なんですか?」
「サンドイッチだよ」
「そうなんですか⁉ 今、私の友達が並んでるんですよ!」
「マジ?」
「はい! 時間がかかりそうだったので、手分けして並ぶことにしたんです」
「なーんだぁ〜」



