猫目先輩の甘い眼差し



考えている間に目の前で約束が交わされ、郁海くんという彼はトイレに行ってしまった。


思い出せなかったけど、放課後に会えるみたい。

こんなにすぐ願いが叶うなんて、なんだか今日はツイてるな。



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「市瀬さん! 遅くなってごめんね〜」

「大丈夫だよ。私も今来たところだから」



ホームルーム終了後、廊下で笹森くんと待ち合わせし、生物室へ向かう。

仲介役として、郁海くんという彼も来るとのこと。


掃除中も考えてたけど、やっぱりどこかで見た気がする。

あの低い声も、なんか聞き覚えがあるんだよなぁ。



「──優雅な黒猫?」

「うん。先輩が部活に入った時、『猫みたいな子が来た!』って噂されたらしくて。それで校内に広まったって、3年生の人が言ってた」



移動しながら、猫目のお兄さんこと、一ノ瀬先輩について教えてもらった。

上品さとかっこよさを兼ね揃えた雰囲気から、陰で優雅な黒猫と呼ばれているのだそう。


確かに、白猫やトラ猫よりも黒猫のイメージが近いかも。髪の毛も黒いし。



「多分、見学者が殺到したのも、先輩効果じゃないかな」

「だから女子が多かったんだ」