「零士先輩、昔から優しかったんだね」
「うん。マジであの時は神様かと思ったくらい。もちろん、市瀬さんも負けてないよ」
「ええっ、本当?」
「本当だよ。さっきも言ったじゃん、素敵な人だって」
真っ直ぐした目で再び褒め言葉をかけられて、不覚にもドキッとしてしまった。
なかなか人を褒めるイメージがない人にストレートに言われると……なんか照れちゃうな。
「さっき説明したように、俺、家庭環境の影響で、女の人が苦手で。だから、女子とどう接すればいいのかわからなくて……」
少し切なそうに前を見つめる樫尾くん。
根本的な原因は違うけれど、異性が苦手って、私と似てる……。
「交流すればするほど、親の影響で、嫌な部分が目につくようになってさ。零士さん目当てで近づいてきたり部活に入ってくる人に対して、嫌悪感があったんだ」
「っ……」
樫尾くんと初めて話した時を思い出した。
投げかけられた鋭い質問と、威圧感のある表情。
そうか……。あれは恩人である大切な人を守るために、牙を剥いていたんだ。



