猫目先輩の甘い眼差し



「そうだったんだ……話してくれてありがとう」

「ううん。長い間、悩ませてごめんね」



久しぶりに、真正面から顔を合わせた私達。

胸に引っかかっていたつまりが、先程の不安と同様、スーッと消え去った。



「良かった。私てっきり、樫尾くんが先輩を狙っているのかと思ってたよ」

「ふははっ。なんでそういう思考になるの」

「だって樫尾くんだけ『零士さん』って呼んでるし。相当慕ってるんだろうなぁって思ったから」



理由を話したら、プルプルと肩を震わせ始めた。

ここまで笑ってるの、珍しい。
そんなにツボに入ったのだろうか……。



「慕ってはいるけど、恋愛感情の好きではないよ。俺にとって零士さんは、恩人みたいな存在かな」

「恩人?」



零士先輩に助けられた経験があるの?



「あれ? 聞いてない? 俺、零士さんと数年間、同じ小学校だったんだよ」

「ええっ⁉」



初めて聞いた新事実に目を見開いた。


……そういえば、ツーリングに行った時、目黒先輩と樫尾くんの関係を聞いたんだっけ。

目黒先輩の話にビックリして、樫尾くんの情報が全然入ってこなかったんだ。