苦笑いの樫尾くん。
うんとは言わなかったものの、傍から見たらかなり酷かったのだろう。
気まずい思いはしたけれど、もし鉢合わせたのが、先生や他のクラスメイトだったら。
私達が交際していることを知らない人だったら。
そう考えると、ゾワゾワと鳥肌が立つ。
鉢合わせたのが彼で良かったと、つくづく思った。
「元々、猫を溺愛してる姿は見てるから、耐性はあったんだよ。だけど、さすがにキスしてたのは……」
「やめて! それ以上は恥ずかしいからやめて!」
彼の口からキスという単語が出てきた瞬間、慌てて声を張り上げた。
樫尾くんが言うには、猫を可愛がっている時以上に甘い声を出していたらしい。
思い出せば、あの時の先輩の顔、猫好きのお兄さんじゃなくて。
好きで好きでたまらないって、完全に男の人の顔してたもんな。
……って、恥ずかしいって自分で言っておきながら、何を思い出してるんだ。
友達にがっつりキスシーン見られたのに、回想してる場合じゃないよ!
「あの……先輩と付き合ってることに対しては、怒ってないの……?」



