小走りで去っていく背中を眺める。
学校に戻ってきて数日。
未だに樫尾くんとは気まずい雰囲気のまま。
挨拶はするようになったけど、以前みたいに話しかけることはなく、会話も最低限。
痺れを切らして、先輩に叱ってもらうよう伝えたのかな……。
放課後を告げるチャイムが鳴り、部室には行かず、急ぎ足で自転車置き場へ。
校門で待つこと5分。
零士先輩と落ち合い、通学路を歩きながら話を聞く。
「郁海から、世蘭ちゃんと気まずい雰囲気になってるって聞いて。あれ、俺のせいだよな」
「本当にごめん!」と信号待ち中に深々と謝罪された。
「誰もいないからって、調子に乗りすぎた」
「ち、違うんです! 先輩の問題じゃなくて、私の問題で……」
頭を下げ続ける先輩に、逃げ出した事情を説明する。
当時の状況と重なり、フラッシュバックしてしまった。
隠れて仲良くしていたことに対して、激しい嫌悪感を抱いたのではないかと。
また同じことを繰り返してしまうのかと思ってしまい、怖くなって逃げたと。
声を震わせながら、胸の内を全て告白した。



