てへへと笑った彼に鼻で溜め息をつく。
まさか、こんなに寂しがり屋さんだとは思ってなかった。
別に、嫌なわけじゃなくて、すごく嬉しいんだよ?
昨日、写真を送った後に提案されて、『先輩と会えるんだ……!』ってニヤニヤしてたから。
ただ、いきなり抱きつかれたから、少しビックリしているの。
「そんなに大変なんですか?」
「今はまだ、そこまではないけど……これから忙しくなってくるって、先生が言ってた」
そう答えると、再び顔を埋めて背中に腕を回してきた。
朝日先輩も目黒先輩も、今月から部活はしばらく休むって言ってたっけ。
性格もあると思うけど、優秀な零士先輩がここまで甘えたモードになるのなら、やっぱり大変なんだな。
まだ1年も先だけど、少し不安になってきた。
✾✾
その週の土曜日。
晩ご飯の手伝いをした後、家族にバレないよう、こっそり家を抜け出して剣道場へ。
「世蘭ちゃーん!」
「零士先輩っ、お稽古お疲れ様です」
稽古終わりの先輩と再会の握手を交わし、一緒にバス停まで歩く。



