猫目先輩の甘い眼差し



てへへと笑った彼に鼻で溜め息をつく。


まさか、こんなに寂しがり屋さんだとは思ってなかった。


別に、嫌なわけじゃなくて、すごく嬉しいんだよ?

昨日、写真を送った後に提案されて、『先輩と会えるんだ……!』ってニヤニヤしてたから。


ただ、いきなり抱きつかれたから、少しビックリしているの。



「そんなに大変なんですか?」

「今はまだ、そこまではないけど……これから忙しくなってくるって、先生が言ってた」



そう答えると、再び顔を埋めて背中に腕を回してきた。


朝日先輩も目黒先輩も、今月から部活はしばらく休むって言ってたっけ。

性格もあると思うけど、優秀な零士先輩がここまで甘えたモードになるのなら、やっぱり大変なんだな。

まだ1年も先だけど、少し不安になってきた。



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その週の土曜日。

晩ご飯の手伝いをした後、家族にバレないよう、こっそり家を抜け出して剣道場へ。



「世蘭ちゃーん!」

「零士先輩っ、お稽古お疲れ様です」



稽古終わりの先輩と再会の握手を交わし、一緒にバス停まで歩く。