「会いたかった」
「私もです」
そう答えると、さらに強く抱きしめられた。
っ、くすぐったい……。
首元に顔を埋めた先輩の髪の毛が肌に触れて、ピクッと体が揺れる。
この時期は、部活動を引退する3年生がぞくぞく増えてくる頃。もちろん、零士先輩も例外ではない。
今年いっぱいまで剣道は続けるとのことで、毎週土曜日は会ってるんだけど……。
それでも、学校で会えないのは寂しいからと、毎週水曜日の放課後に、ここで会うことになったのだ。
「先輩っ、ちょっと苦しいです……」
「あぁっ、ごめんね!」
バッと体を離し、まるで子犬……というより、子猫のような顔で見つめてきた。
2学期に入ると、忙しくて会う時間が減るだろうなと、付き合った時から予想はしていた。
だから、週に1回会えるだけでもいいほう。
会える時間を大切にしようと思っていたのに……。
「寂しかったから、つい」
「昨日会ったばかりじゃないですか」
「そうだけど、今まで毎日のように会ってたもんだから……」
「…………」



