猫目先輩の甘い眼差し



「ありがとうございます」とペコッと頭を下げる。


部長か、副部長か……。


小中学校の頃は、副班長や委員長に選ばれた経験はあるけれど、動物部は規模が違う。

数人や数十人ならまだしも、数百人いる部員達をまとめることなんてできるだろうか。



「じゃあまた。──明日、楽しみにしてる」

「っ……はいっ」



考えていると不意打ちで囁かれて、バクンと心臓が揺れた。

顔を上げた先には、昨日と同じ、少し意地悪そうな微笑み。

もう……誰もいないからって、こんな外でいきなり囁かないでくださいよ。


颯爽と去っていく背中を軽く睨みつける。



先輩が人気者というのもあり、私達の関係はごく限られた人しか知らない。

そのため、怪しいと勘ぐられないよう、みんながいる前では名字で呼び合っている。



そして、先程彼が口にした、『楽しみにしてる』というのは──。



「世蘭ちゃん、お疲れ様」

「お疲れ様で……うわっ」



その翌日。
毎度おなじみの、放課後の人気のない校舎裏。

私を見つけた途端、零士先輩は正面からガバッと抱きついてきた。