なんて、心の声が届くことはなく。
「ねぇ、ちょっとだけギュッてしていい?」
「……っ、どうぞ」
背中に手が回り、優しく抱き寄せられた。
制服越しに体温が伝わってきて、さらに心拍数が加速する。
この下に、鍛え上げられた肉体が……。
って! ダメダメ! 何考えてるの!
今思い出したら、まともに先輩と目合わせられないって!
「すみませんっ。汗臭いですよね」
「えっ? 全然そんなこと。むしろいい匂いがするよ。何か付けてきた?」
体温が急上昇するのを感じ、慌てて体を離したけれど、返ってきたのは予想外の答え。
いい匂い……? 香水とか?
アクセサリーと同様、猫がいるからあまり付けないんだけどな……。
「……あ、多分リップクリームの香りじゃないですか? さっき塗ったので……」
思い出した。身だしなみチェックの最後に塗ったんだった。
先輩の肉体美が脳内を駆け回っててすっかり忘れてた。
「なるほど。これは、フルーツの香り?」
「はい……確か、ピーチだったと……」
「へぇ……」



