首にネックレスが触れて、ヒヤッとした感覚が伝わる。
と同時に、綺麗な顔が近づいてきて、反射的にギュッと目を瞑った。
趣味のために頑張って貯めたお金を、私のために使われるのは、少し気が引ける。
だってあのバイクは、先輩とは1年以上の付き合い。今年から交流を始めた私よりも遥かに長い。
なんだかバイクに申し訳ないよ。
「よし、ついた」
耳元で声が聞こえ、ゆっくり目を開ける。
「ど、どうですか……? というか、見えます?」
「うん。見えるよ。今こんな感じ」
バッグから鏡を出して私の顔に向けた零士先輩。
シャツの襟とネクタイの上に乗っかっていて、首周りが少々ごちゃごちゃしている印象。
だけど、ネクタイの色に引けを取らないくらい輝いている。
「赤も似合うけど、世蘭ちゃんは青のほうが似合うね」
「っ……それなら、先輩も」
「青のほうが似合います」と、同じように言い返したら、先輩の目が嬉しそうに弧を描いた。
顔も耳も真っ赤で、つられて自分も体中が熱くなる。
まだ残暑があるこの時期に、これ以上ドキドキさせないで。
のぼせるどころか、クラクラしちゃいそう。



