鏡とブラシをしまい、深呼吸をする。
交際1ヶ月記念のデートは、スパゲッティとパンケーキを奢ってもらった。
美味しかったし、楽しかったんだけど、唐揚げの話題には一切触れることなく終了。
結局今も、苦い顔をした理由がわからずにいる。
あれこれ考えても納得いく答えが見つからなかったから、後で聞いてみようかな。
「世蘭ちゃん、遅れてごめんね」
「あっ、先輩!」
フーッと息を吐ききったタイミングで、零士先輩がやってきた。
「お疲れ様です」
「こちらこそお疲れ様。誕生日おめでとう。これ、プレゼント」
「ありがとうございます!」
差し出された紙袋を受け取る。
月香ちゃんのよりも一回り小さな、白くて艶のある紙袋。
真ん中には、お店の名前らしき文字が書かれている。
ん……? この文字、どこかで見たような。
「開けてみて」と言われ、テープを剥がして中を覗く。
「えっ……これ、まさか……」
「うん。そのまさかだよ」
「っほ、本当にいいんですか⁉ だってこれ、さ、3万円の……」



