猫目先輩の甘い眼差し




朝日先輩と別れて駐輪場にやってきた。



「…………」

「…………」



お互い、一言も発することなく、淡々と自転車を運び出す。


……怒ってるよね。


いくら心が広いとはいえ、今日は1ヶ月記念日という特別な日。

彼氏である自分よりも他の人を優先されたら、誰だってあまりいい気分はしないはず。


それなのに私は、先輩が優しいからって、無茶なお願いを……。



「……ごめんね」



もう1度謝ろうとしていたら、先に零士先輩が口を開いた。



「年上なのに、余裕なさすぎだよな。かっこ悪いところ見せちゃって本当ごめん」

「っいや! 私のほうこそ! 勝手な行動してすみませんでした」



門の前で頭を下げ合う。


余裕なさすぎだなんて、かっこ悪いだなんて、全然そんなことないのに。

むしろ、先輩の気持ちを考えなかった私のほうが余裕ないのに。



「もしかして、お昼ご飯、バイキングに行くつもりでしたか……?」

「ううん。ファミレスだから安心して」