「うわっ!」



校舎裏から誰かが出てきて、思いっきりぶつかった。



「いたた……」

「すみません! おケガはありませんか?」

「はい……っ。こちらこそすみませ……」



謝罪しながら顔を上げた瞬間、予想外の人物がいて声が詰まった。


丸く開かれた、切れ長の大きな目。

チャームポイントの黒い髪の毛は濡れていて、なんだか色っぽく見える。



「市瀬さん……! なんでここに⁉」

「それはこっちのセリフですっ! どうしてこんなところにいるんですか!」



ハッと我に返り、少しキレ気味に返してしまった。


先週、部室で気まずい思いをした日から。肩を優しく叩かれたあの日から。

顔を合わせるのが恥ずかしくなって、早退したのをいいことに、しばらく部活を休んでいた。


そろそろ顔を見せなきゃとは薄々思っていたけれど……まさかこんなところで出くわすなんて。

しかもプール上がり…………ん?



「……先輩、水泳に出てたんですか?」

「うん。これから試合に行くところ。郁海に聞いてないの?」

「はい。今初めて知りました」