「あ、今は寂しくないよ。部員もたくさん入ってきたし。それに市瀬さんや颯くんとも出会えたから。仲良くしてくれてありがとね」
「そんな……私は何も」
っ……またサラッと嬉しいことを。
余裕と器の広さは、小さい頃の色んな経験からきているのかも。
「あの、さっき、自分も警察官目指してたって言ってましたよね? いつまで目指してたんですか?」
「中1。当時職場見学で、お父さんの仕事場にお邪魔したんだけど、その時に諦めたんだよ」
「えっ! どうしてですか⁉」
「現実を目の当たりにしてさ。自分には向いてないなって思っちゃった」
目の当たりって、そんなにリアルな現場を見てしまったのだろうか。
「まぁ、薄々感じてはいたんだよね。上2人が進学校のトップで劣等感あったし。弱い心で犯人なんか捕まえられないよ」
少し切なそうな横顔を見つめる。
進学校のトップならば、相当優秀なのだろう。
劣等感を抱くって、昔はそこまで頭が良くなかったのかな?
なんて思ったけど、わずか中1で、ここまで深く考えるならそんなわけないか。



