ブラッド★プリンス〜吸血鬼と女神の秘密〜

 必死に目を凝らすと、目が慣れたのかすぐ近くに立つイリヤくんを見つけた。

 でも、様子がおかしい。何かを探すように、周りをキョロキョロとうかがって、構えるような体勢をしている。

 これはなんだろう、と話しかけようとしたとき、背後に人の気配を感じた。ふり返ることが出来ないうちに、黒いベールが視界に入る。

「びっ、びっくりした! だっ、誰?!」

 顔を隠したいのか、目鼻は深くかぶったベールで見えない。全身黒ずくめの影からのぞく赤い唇が、笑っているのだけは分かった。

「あら、こちのことを知らぬとな?」

 赤い口角を不気味に上げる姿に、背筋がゾクッとした。

「……ディモラムだな」

 誰かのつぶやくほどの声がする。聞き覚えのある低い声は、ルキくんだ。どうしてここにいるの?

「黒いベールに隠されていて、誰もその素顔を見たことのない殺人鬼」

「さ、(さつ)……?!」

 震え上がる足と手。しゃがみ込んだまま、腰を抜かして立ち上がれなくなっていた。

「さすが、黒羽家は情報が早いのね。あなどれないわ」

 黒ずくめの女は、ヒヒヒと不気味な笑い方をした。

 この殺人鬼は、ルキくんと知り合いなの⁈

 だめ、今はそんなことを考えている場合じゃない。早く逃げないと。でも、体が言うことを聞かない。