「ありがとうハヤセ。わたし、勉強も授業も色々がんばる!
ハヤセに手助けさせちゃわないくらい、いつか自分だけでフランス語も話せるようになるから!」
「エマお嬢様はそのままでいいんです。背伸びなんかしなくていい。そのままの純粋さでいてください」
「…うん。昔から1ミリも変わってない!」
ホッとした顔に満足して、スキップをするように飛び跳ねた。
手入れされている中庭のアーチを潜って噴水場。
「エマお嬢様、」
「ん?」
噴水に向かっていた足はピタリと止まって振り返る。
ハヤセは微笑みをスッと消して、だけど穏やかな顔で見つめてきた。
「俺は手助けをしているわけではありません。手助けとは思わないでください。
エマお嬢様と過ごす毎日は楽しくて仕方がないんです」
「…それは、わたしもだよ…!」
「いえ、きっと俺のほうがです。だから今日の授業のときだって、俺が勝手にしているだけですから」
どうしてかハヤセとはずっと一緒にいるんじゃないかなって思った。
根拠なんかないけど、これから何よりも強力な絆を一緒に作っていけるんじゃないかって。



