むにっと、少しだけ痛さはあるけどぜんぜん痛くない力加減でほっぺたを引っ張られた。

右も左もお餅みたいに伸びる。



「はひゃへ?」


「…参ったな。これは俺にとってはご褒美でした」



ご褒美?どーいうこと…?

されるがまま引っ張られてるわたしの顔を見て吹き出すように笑ってるし…。


そんなにひどい顔してる…?

でもそれがご褒美って、ハヤセよく分からない。



「とても可愛いものが見れましたので」


「っ、」



かわいい……?

かわいいって、わたしのこと…?


すると引っ張られていた微かな痛みは無くなった。



「もう比べたら駄目ですよ。というより、他の男の名前を出さないでください」


「が、学院長とか…」


「彼のことは“海藻を被った人”と呼びましょうか」


「えっ!?それバレたらヤバくない!?」


「ええ、かなりヤバいですね」



そっと頬を撫でてくれる。

痛くさせてごめんなさい───と、謝ってくれるみたいに。



「いいですか、エマお嬢様。これからは俺の言うとおりにしてくださいね」


「……は、はい…」


「うん、いい子だ」



わたしが敬語、彼がタメ口。

いつもと逆の光景が歳の差を表してくれるみたいで、無意識にもドキッとした。


優しくて甘い、それがわたしのエリート執事さん。