「エマお嬢様、」



そしてもう1度呼んで、ソファーに座るわたしに跪(ひざまず)くように膝立ちをして見上げてきた。

それは仕えると心に誓ったお嬢様に対する、忠誠の証だ。



「わっ、」



ゆっくり伸ばされた手は、疑心暗鬼に怯えるわたしの手を安心させるみたいに。

そっと重ねるように掴まれた。



「俺は絶対に辞めませんから。今までの執事と俺を比べないこと、約束です」



そのまま差し出された小指。

同じものを合わせてください───と、聞かなくても分かってしまう行動。


無意識だった。

それはもう無意識に小指を絡ませた。



「ゆーびきーりげーんまん。嘘ついたら…」


「…うそ、ついたら?」


「───お仕置きです」



一瞬だけ意地悪な顔を見せたハヤセ。


お仕置き…?
え、どんなお仕置きがされちゃうの…?

火炙りの刑とかお尻ペンペンの刑とかぜったい嫌だよわたしっ!



「ゆーびきった」



この人が指切りげんまんを歌うのだって違和感があるのに…。

エリートなのに嫌味も皮肉さもなくて、どこか無邪気だから恨めない。