「だってわたし、問題児で破壊神っていう異名持ってるし…」


「まったく、誰が付けたんですか。そんなセンスの欠片もない異名」



思い返すと誰が付けたんだろう?って、自分でもよく分からない。

気づけば自然な流れで付けられていて。



「いやいやっ!Sランク執事さんがわたしの執事なんかだめだよ…!今まで新米Dランクが当たり前だったのにっ」


「樋口含め今までの者は執事とは呼べません。忘れてください」



忘れてください、って言われましてもだ。

あなたが特別すぎるのだと思うんですが違いますか…?


だってSランクさんだよ?

わたし並んで歩けないよ、小さくなっちゃうもん。



「お姉ちゃんとまちがえてない…?」


「いいえ、間違えていません」


「な、なにかの手違いとかじゃ───」


「ご安心ください。必ず俺があなたを立派なお嬢様にしてみせますので」



エマお嬢様───と。

昨日から、この人はたくさんわたしの名前を呼んでくれる。



「俺があなたの執事になりたいと望んだのです」



“柊 アリサの妹”でもなくて、“柊家の娘”でもなくて。

彼はわたしを“ただのエマ”として見てくれているような気がする。