だから彼女は今になって仕返しをしているのか。
あのときの茶道だって、食堂で必ずエマお嬢様の元へ向かうのも。
生徒を味方に付けて、“秀才“と”問題児”という現実を目に見えるように浮かばせる。
だけどそれは俺にとっては逆効果ということをアリサ様は分かっていない。
そんな中でも笑顔を浮かべて健気に生きるエマお嬢様を見て、俺がどんな感情と欲望に駆られるかを知らないのだ。
「1度もありませんよ」
「…なに、が」
「エマお嬢様があなたを責めたことも疑ったことも、悪く言ったことも…1度たりともありません。
むしろあなたのことを自分の誇りとでも言うように話してくれていました」
俺が褒めると必ず彼女は『お姉ちゃんのほうが』という言葉を出す。
それは“姉のほうがすごいから”という意味にも取れるが、実際は少しだけ違う。
わたしの姉は誰よりもすごいんだ───と言っているように俺にはいつも聞こえていた。
「かなり昔のものですね、そのしおり」
「っ…、」
「そのときからずっと大切にされていたのですね」
エマお嬢様が抱える孤独は、アリサ様が焦がれ続けた自由。
アリサ様が手にする才能は、エマお嬢様が背負い続ける劣等感。
けれどその四つ葉のクローバーの上に幸せがあったことは───…真実だろう。
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